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カラダに適した食事

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2020年4月5日

日々の生活の中での食習慣はカラダに適した食事で考えましょう。目安は地域の自然の食材をなるだけありのままの状態に調理した食事です。
料理の栄養や成分を重要視する事ではありません。炭水化物(糖質と食物繊維)・たんぱく質・脂肪・ビタミン・無機質(塩分など)といった物質はカラダにとって必要ですが、すべてはカラダで消化吸収してからの話です。またその多くを外部摂取だけに頼っておらずカラダでも生成していることが知られています。

食材を考える

「味覚だけに頼って好きなものを食べる」はもちろん、「栄養や成分だけを考えて食べる」のではカラダに適した食事にはなりません。食事は口に入れた時に完了するのではなく、「自身の消化器官」や「共生菌の助け」で消化・吸収してカラダの細胞で利用される状態になって、また不要な物質がカラダの外に排泄されて初めて完了します。
例えば白米と玄米で考えると、白米は血糖値を上げ肥満になりやすく、玄米は血糖値を安定させ体型維持に良い食材とされています。でも白米も玄米も同じお米を収穫した食材です。含まれている栄養のうち糖質の量にほとんど差はありません。違いは消化吸収の速度です、白米は一気に糖分が吸収されるのでカラダに負担がかかり、玄米は緩やかに吸収されるので負担が少なく効率よくエネルギーとして代謝されます。栄養や成分を気にして制限したり、過度に摂取しても結局はカラダの仕組みで消化吸収します。一つの食材はそのままで一つの命を育んでいます、何かを外すことは命の要素を外すことになります、なるたけありのままを食すことを考えることがカラダに適した食事につながります。
カラダのためには「おいしい料理」や「食品の栄養や成分」ではなく、調理に使用する食材について考えてみましょう。カラダの中でどのように消化・吸収または排泄されるかまでを意識しながら考えるとカラダに適した食材が見えてきます。

地産地消、身土不二

消化・吸収・排泄を考えた時に、目安としては地域の自然のものをなるたけありのままの状態で食べる事ができる食材になります。
生き物は育つ環境の中で食料を見つけ、カラダもその食料に合うように長い年月をかけて変化していきます。人も地域の食料や気候などによってカラダが変化してきました。例えば海外では避けられている黒い食材の海藻を生で食するのは、四方を海に囲まれた日本特有の食文化です。日本人のカラダには藻の細胞壁を壊す消化酵素があります。古くから地域の食材を生で食べ続けることで、食材に付着している菌がカラダに取り込まれて消化する仕組みができたのです。
日本の「地域の自然のもの」としては植物(含む菌類)と魚介をベースに食材を考えてみましょう。
植物性の食材でも本来日本になかった野菜などはカラダに負担がかかる場合があります。ナスは1000年くらい前に伝わったものです。東洋医学では体温を下げる効果があるとされているので、体温を上げる生姜を添えて食べる工夫をしています。そのほか大豆(含まれるイソフラボンがヨウ素を排出すると言います)に海藻(ヨウ素の含有が高い)など食べ合わせが考えられているのも地域に根ざした食材だからと言えます。
地産地消、身土不二は過剰な生産をしないためにも必要な考えです、地域性を持つ事で消費量が限定され自然の許容量の中での生産が保てます。需要を増やすため消費地域を拡大する事は、生産地の自然環境を壊すことにもなります、現代の社会構造では全ての食材を地域に依存する事は難しいのですが、持続可能性を維持するためにも地産地消、身土不二の理念は残していきたいと思います。

ありのあまま

ありのまま(一物全体食、ホールフード)の考えとしては、なるたけ加工・精製していない食材です。精製した食材は消化吸収が速くカラダの調整ができなかったり、栄養が無駄になったりします。穀物は玄米、お蕎麦を選びます、白米や小麦は精製度合いが高いので選びません。野菜や果物はなるたけ皮ごと食べるのが良いでしょう、ジュースとして摂取するのは消化吸収が速いので食習慣としての摂食方法としてはお勧めしません。また食材の生命を頂くのですからなるたけ余す事なく無駄にしない事で、自然に栄養や成分も余す事なく頂けるようになります。この考え方はお塩や砂糖なども同じです、不純物を取り除く程度のなるたけ精製していない事が大事です。

自然農・自然栽培の植物(含む菌類)

食材となる植物(植物ではないですが菌類を含みます)は自然に自生しているものと、人の手によって育成されたものがあります。育成されたものでは遺伝子組み換えや遺伝子操作のない、なるたけ固定種に近く、無農薬で無肥料で育った野菜や穀物、果物、キノコが理想です。
固定種は人間の手で品種改良をされていない在来の品種です。遺伝子組み換えや遺伝子操作でなくても、他の品種と掛け合わすことで品種改良を行う事ができます。全てを悪いということではありませんが、アレルギーの要因となる小麦粉のグルテンを増やしたのも、増粘性を増すために品種改良した結果です。過剰に栄養素や糖分を上げることは、植物の育成時に余計な養分が必要になり土壌を枯れさせたり、肥料を必要とした農作をすることになります。また肥料を加えると虫も余計に引き寄せます。このため植物の過度の品種改良は肥料や農薬無しには育てられなくなります。
無農薬はホールフードとして丸のまま、なるたけ精製しないで頂くためです、農薬は少量でも有機でも無いに越したことはありません。無肥料は自然のままの食材として育成することで、カラダだけでなく自然環境も乱さないためです。肥料による過度の栄養はカラダに負担になるだけでなく、植物と地中の菌との共生関係を崩すことで生態系にも影響を与えます。
自然農・自然栽培は有機栽培と違って認可機関がないので生産者の考え方で土壌作りや育成方法に違いがあります。生産者と消費者が情報共有をしてお互いが納得のいく育成方法を選ぶことで、お互いが安心できる生産と消費の関係を作ることができます。地域などの小規模のコミュニティから生産者と消費者が協力し合う食のネットワークを作り上げることで、自然治癒に適した食生活環境を整えることができます。食について食材から考えることで消費だけでなく生産についても意識するようになり、持続可能性(sustainability:サステナビリティ)を持った自然治癒につながります。

天然の魚介

魚介、海藻など海の幸(シーフード)は、日本人の伝統食です。魚介類は天然が理想です。遠洋の大型魚は食材としては部位に分けることになります。なるたけありのままの状態で食べることを考えると近海の小型、中型魚を頭から尾までを食材としていただきます。養殖の場合は餌が天然由来かどうかや、自然農・自然栽培のように本来の食環境に合わせた養殖であるかで選ぶ必要があります。農業と同様に生産者と消費者が情報共有をしてお互いが納得のいく育成方法を選ぶことが大事です。遠洋の魚は他国の漁場を使用します、供給国と消費国の経済的な差がある場合は自然環境のバランスを超える漁獲量になる可能性があります、ここでも国を超えた相互理解が必要です。

動物性の食材

日本人にとって動物性の食材は古くは祝い事などの特別な日に食している程度で、日常的には食されていませんでした。日本人が牛乳の乳糖を消化する酵素が少ないのも常食としていなかったためです。消化が滞ると大腸内に残留し有害菌に利用されてるため自然治癒を阻害します。遠方の食文化が地域の食文化に影響を与えることは避けられないことなのかもしれませんが、食習慣に取り込むのはカラダの機能を考えて慎重に選択してください。またカラダだけに視点をおかず自然環境を考えた時に遠方の食材の生産を行う事が地域の自然環境を崩さないかも考えることは次の世代に対しての責任だと思います。

footnote

白米と玄米

玄米はお米から籾殻だけを取り除いたほとんど精製していない穀物、白米はさらに糠(ぬか)と胚芽(はいが)を取り除いて胚乳(はいにゅう)だけに精製した穀物です。
血糖値の高い人や肥満な人は白米の量を減らすように指導されたり、ご自分で気づかったりすると思います。それは白米に含まれている糖質が血糖値を上げるためです。逆に先の症状の方は玄米を食べることを勧められます、それは玄米には血糖値を下げたり肥満を防ぐ効果があるからです。しかし白米も玄米も同じお米なので糖質の量はほとんど同じです※1、それではこの違いは何故でしょうか。
白米はよく噛むと口の中で甘味を感じます、これは唾液に含まれる消化酵素によってマルトースとよばれる糖に分解されるからです。マルトースは小腸で消化酵素のマルターゼによってグルコースへ分解されます※2。白米は早い段階でブドウ糖にまで分解されるので短時間で血管にブドウ糖が流入して、血糖値をあげ高血圧の要因となります。次に一気に上がった血糖値を下げるためインスリン ※3が分泌され、余分な糖分を脂肪細胞に保存することから肥満の要因となります。またインシュリンの分泌によって血中のブドウ糖が減少すると視床下部が反応して空腹感が出現し、食事の間隔が狭まる事で過食になる傾向があります。
玄米は糠によって消化に時間がかかります※4、時間をかけてグルコースに分解するため血糖値の上昇も緩やかになります※5。常に安定して血糖値が維持されるので空腹感も抑えられます。
※1 糖質の量
100gあたりの糖質量は、玄米72.5g、白米75.5gです。若干玄米の方が少ないのは他の栄養素が余計に含まれているからです。
※2 マルトースとマルターゼ
マルトースは麦芽糖です。マルターゼは膵臓から小腸に分泌される膵液に含まれていてる消化酵素で、グルコースに分解します。口内でほとんど分解されたマルターゼは、早い段階で小腸に移動してマルターゼによってグルコースにまで分解されます。グルコースはブドウ糖と同じです、そのまま腸壁から血管内に流れ込むので短時間で血液中の血糖値が上がります。
※3 インスリン
インスリンは血中の糖分が上昇すると膵臓に存在するランゲルハンス島(膵島)のβ細胞から分泌されるペプチドホルモンの一種です。インスリンは脂肪細胞の表面の受容体に作用して脂肪細胞内に糖分の取り込みをうながします。糖分は脂肪細胞内に脂肪として蓄えられます。
※4 玄米の消化
玄米の糠は食物繊維で殻のようになっているため、「食感が悪い」や「消化に負担がかかる」との意見があります。玄米の調理法で「発芽玄米」、「酵素玄米」があり、それぞれ食感を良くして消化を助けるので、調理法も含めて玄米食を取り入れてください。玄米に関して他のネガティブな意見として、「種子が酸化することを防ぐアブシジン酸」、「外敵から身を守るフィチン酸(実際には玄米ではフィチンで摂取後フィチン酸になります)」を挙げる意見があります。アブシジン酸はミトコンドリアに悪影響を与える、フィチン酸は体内のミネラルと結合して排出されるので栄養を失う可能性があると言う見解です。しかしアブシジン酸は植物、フィチン酸は種子(ナッツや豆類)で共通の成分で、特に玄米だけの話ではありません、また先の調理方法「発芽玄米」、「酵素玄米」によってほとんど解消されます。
※5 血糖値の上昇
血糖値の上がるスピードを測る数値としてGI値(グリセミック指数:glycemic index)があり、数値が高いほど血糖値の上がるスピードが速い事になります。
GI値は白米80、玄米は50です。