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水浴

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2019年10月11日

生物の進化の過程で陸に上がった生物にとって、陸上は海の中の生活より過酷な環境でした。水・湯を浴びることはカラダを清めるだけでなく、陸上の環境からカラダを解放して自然治癒をうながしてもくれます。特に温泉地の温泉成分を含んだお湯には自然治癒を活性する化学薬理作用があります。ご自宅でも適温のお湯に浸かることは温熱作用や物理作用があります。
温泉地・ご自宅のお風呂で湯船に浸かることは自然治癒としての水浴が行えます。

温熱作用

温熱作用は湯船の温度で高温浴と微温浴に分かれます。

高温浴

高温浴は42 – 43度と体温より高めにする事で交感神経が優位な状態になります。

・アドレナリンが分泌されて気分が高揚します。

・コルチゾールの分泌でリウマチや気管支炎に作用します。

・胃酸の分泌が減少するので、胃酸過多に作用します。

ヒートショックプロテイン(HSP)が増加してナチュラルキラー細胞(NK細胞)活性が高まります。

微温浴

微温浴は37 – 39度と体温より若干高めにする事で副交感神経が優位な状態になります。

・血管が拡張してゆっくりカラダの芯まで温かい血液が流れ温まります。

・リラックスする事でアセチルコリンが分泌され心身の鎮静作用があります。

・たんぱく質分解酵素のプラスミンによって血栓溶解能に作用します。

・筋肉が弛緩する事で筋肉の凝りが和らぐ作用があります。

物理作用

水圧による作用

お湯に浸かることはお風呂でも水圧を受けます。この圧力は胸囲が3~5cm縮むほどです。この圧力で足にたまった血液が押し戻され、心臓の働きを活発にし血液の循環を促進します。腹部にかかる水圧が横隔膜を押し上げて肺の容量を減少させるため、空気を補うために呼吸の回数が増え心肺機能が高まります。

浮力による作用

カラダにかかっている重力が浮力によって軽減されます。湯船の底に身体が沈んでいても浮力は働いています。お風呂に浸かると、体重は約9分の1程度になります。普段体重を支えている筋肉や関節は、その役割から開放され、心身ともにリラックスできます。

化学薬理作用

環境省による温泉の定義は「温度(温泉源から採取されるとき摂氏25度以上であること)」か、含んでいる「物質」によります。物質は地中から湧き出す地下水が湧出する過程で、岩石や土壌から溶け込んだ化学成分です。化学成分の中で特定された温泉成分が含まれている場合に温泉として定められており、その中で特に治療の目的に供しうる物質を含んでいる場合に療養泉として定められています。この温泉成分の作用が化学薬理作用です。温泉成分の吸収経路は皮膚からの経皮吸収、温泉水を飲む飲泉、呼吸による吸浴です。経皮吸収は主に肌組織、飲泉は消化器官、吸浴は肺から血流に入り全身に作用します。

入浴作法

温泉・お風呂の作用を効果的にしたり、お風呂場での事故を防ぐために日本では伝統的な入浴作法があります。入浴作法に沿った湯船の浸かり方が、自然治癒としての水浴になります。

1 入浴前

・入浴前に500ml程度の水分補給をしましょう。

・入浴時にはかけ湯をして湯温に慣らしましょう。

2 入浴①

湯船への入浴時間の目安は以下の通りです。(個体差がありますので状態に合わせて調整してください)

・42度:10分

・41度:15分

・40度:20分

2 入浴②

湯船に入ったままの長湯よりは、湯船から出たり入ったりを繰り返す反復浴がカラダに負担が少なく入浴効果も高くなります。

・かけ湯の後に湯船に軽く浸かる、ほどほど5分

・一旦湯船から出てから入る、じっくり8分

・最後に湯船に浸かる、さっと3分。

2 入浴③

ヒートショックプロテインを増やす方法として高温浴と低温浴を交代で行う温冷交代浴があります。

・高温浴は42度のお湯に肩まで2~3分ほど浸かります。

・低温浴は18度ほどの水風呂に30秒から1分、自宅で行う場合は水シャワーを1分ほど浴びます。冷たいのが苦手な方は風呂桶に冷水を溜めて手足をつけて冷やすのでも効果はあります。

・高温浴と低温浴を3回ほど繰り返し低温浴で終わります。低温浴により血管が放熱を避けるために収縮するので入浴後の湯冷めを防ぎます。

3 入浴後

・高温浴の場合は血管が拡張して熱を発散しやすくなっています、最後に冷水を浴びるか、溜めた冷水に手足をつけて冷やすと、血管が収縮して保温効果が増します。

・睡眠直前の場合は熱いお湯に手足をつけて温めると、血管が拡張して放熱することで睡眠へと促されます。

・入浴後は10分 – 20分間はタオルを巻いてカラダを冷まさないように保温しましょう。

・入浴後に500ml程度の水分補給をしましょう。

4 間隔

ヒートショックプロテインが最も増加するのは2日後をピークに1-3日後です。1週間後には元に戻るので、週2回が効果的です。

footnote

ヒートショックプロテイン(HSP)

ヒートショックプロテイン(HSP)はストレスで傷ついた細胞を修復して、元の元気な細胞にしてくれるたんぱく質です。特にストレスの中でも熱によるストレスで最も多く作られます。

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は血液中のリンパ球の10 - 30%を占めており、常にカラダを巡回してウイルス感染細胞やがん細胞などの異常細胞を見つけて攻撃する細胞傷害性リンパ球の1種です。同じリンパ球のT細胞とは異なり事前に感作させておく必要がないということから、生まれつき(natural)の細胞傷害性細胞(killer cell)という意味で名付けられています。
NK細胞はヒートショックプロテイン(HSP)の増加によって活性します。
※ 巡回
細胞の中で唯一頭から足先(カラダの末端)まで移動できます。

経皮吸収

温泉成分の含まれたお湯を浴びたり浸かることで、肌表面の表皮※1に温泉成分が作用したり、表皮の内部の真皮※2まで浸透することを経皮吸収と言います。
※1 表皮
アルカリ性の温泉成分は角質層のタンパク質を乳化して落とし、肌をツヤツヤにするので俗に美人の湯と言われます。
酸性の温泉成分は皮膚疾患に対しての刺激で一時的に患部を悪化させ、それを乗り越えることで本来もっている自然治癒力を引き出す作用があります。
※2 真皮
脂溶性ガス成分(二酸化炭素ガス、硫化水素ガス、ラドンガス)は吸収されやすく、表皮のすぐ下の真皮に働きかけて免疫能力を高めます。

飲泉

温泉成分の含まれた水・お湯を飲むことで消化器官を整える作用があります。
温泉は鮮度が大事です。地下から湧出された温泉は地上で圧力が下がり不安定になります。不安定な状態から地上の条件下で安定状態に移行しようとするエネルギーがカラダへの刺激になり自然治癒をうながします。温泉水は時間を置くと劣化しますので飲用目的で温泉水を持ち帰らないこと。
1 酸性泉
酸性泉は強い刺激により代謝亢進を促します。
2 炭酸水素塩泉、硫黄泉
耐糖能異常(糖尿病)に作用します。

吸浴

温泉成分がガス(気体)の場合は呼吸によって吸入する温泉浴を吸浴と言います。吸浴では吸入した温泉成分は肺からガス交換(吸入:酸素、排出:炭酸ガス)にて血管に流入して全身に行き渡ります。
1 塩化物泉(食塩泉)
気管支の炎症を抑えます。
2 重曹泉
痰のキレを良くする。
3 硫黄泉
気道の粘膜を刺激して痰を溶かす。
4 炭酸泉
毛細血管を広げて血行を促進する。
5 放射能泉
温泉成分のラドンは活性酸素を除去する抗酸化機能を高めます。鎮静作用があり痛みを和らげます。
大気浴の吸浴

お風呂場での事故

温泉は温度で高温浴と微温浴に分かれます。高温浴は42 - 43度、微温浴は37 - 39度です。
急激な温度の変化や長居はカラダに負担がかかります、適度な入浴を心がけましょう。
1 血圧の乱高下
お湯に浸かった瞬間の血圧の急上昇で脳出血などが起きるケースがあります、入浴後2分間が最も脳出血が多く発生します。また高温浴では入浴直後に血圧は上がり、それから下がりますがさらに下がり過ぎてしまう場合があります。
最初にかけ湯でカラダを温めてからお湯にゆっくりと浸かるようにしましょう。
2 驚愕反応
微温浴では入浴すると血圧が下がります、また高温浴ではいったん上がった後に下がります、血圧が下がった時に意識障害を起こすケースがあります。
ボーッとしたり気分がすぐれない場合は、早めにお湯から出るようにしましょう。
3 血栓発症
高温浴に長時間入ると血液の粘度が上がります。深部体温が2度上昇すると血小板に偽足がでて血管壁にくっつきやすくなり血栓になる可能性があります。
高温浴の長湯は避けましょう。
※ 偽足(あるいは仮足)とは、血小板から伸びるアメーバ状の突起です。偽足が伸びると扁平状の血小板が球状に変化します。
4 早朝
早朝の入浴は避けた方が良いと言われています。これは体内時計で1日のカラダの働きのサイクルを考えると、AM 4:00 - AM 6:00の時間帯にカラダが睡眠から覚醒への準備をするためです。自律神経が交感神経と副交感神経の切り替わりがあり、血圧の上昇・脈拍増加などのリスクが高くなります。